大橋脳神経外科医院、伊東市玖須美元和田、伊豆急行線川奈駅大橋脳神経外科医院

院長ブログ・お知らせ

【院長ブログ5】認知症について

認知症について

 

認知症とは、徐々に進行する、通常は回復しない認知機能の低下とされています。診断は対面での診察で行います。治療可能な原因を調べるためには、血液検査とCTやMRIを利用します。治療は症状を和らげる薬の服用や社会的ケアです。認知症は若年者でも起こりえますが、主として高齢者に起こります。介護施設入居者では半数以上にみられます。主に記憶力が低下し、発症はゆっくりですが、一般には回復が期待できません。

認知症の病因

最も頻度の高い認知症の病型としては以下のものがあります。

アルツハイマー病 

・血管性認知症 

・レビー小体型認知症 

・前頭側頭型認知症

これらは2つ以上の病型が混ざって起こることもよく見られます。(混合型認知症)。最もよくみられる混合型認知症は、アルツハイマー病に血管性認知症が混在したものです。一部の脳の病気(水頭症や硬膜下血腫)、あるいは甲状腺ホルモンやビタミンB12の低下、珍しいものでは毒性物質(鉛)は、認知機能をゆっくりと悪化させますが、これらのものは治療によって改善されます。いわゆる治る認知症として知られています。

うつ病は認知症に類似することがあり(かつては仮性認知症と呼ばれた)、認知症とともに生じることが多々あります。一方、抑うつが認知症の最初の症状であることも多く、専門医でも区別がつきにくいことがあります。

加齢に伴う記憶障害とは、加齢によって起こる認知機能の変化のことです。高齢者は若い頃と比較し、記憶を引き出す能力、特にその速度が遅くなります。こうした変化は日常生活を行う上では悪影響がないため、認知症の症状ではありません。テレビに出ている俳優さんの名前がすぐに出てこなくても、生活には支障はないです。しかし、これも認知症の初期症状と類似しているため、注意は必要です。

最近話題となることが多い軽度認知障害(MCI)では、加齢に伴う記憶障害より記憶障害の程度が強く、記憶力やときにその他の認知機能が低下していますが、典型的には日常機能への影響はみられません。ですが、認知症は日常生活に支障をきたします。軽度認知障害のある人では約半数が3年以内に認知症を発症すると言われています。

主観的認知機能低下(subjective cognitive decline:SCD)は、MCIの分類に用いられる認知検査では正常な成績を残すものの、患者さん自身が認知能力の持続的な低下を経験している状態です。SCDがみられる人も、MCIおよび認知症を発症する危険性が高いと言われています。

認知症の症状

認知症の症状は連続的であるものの、以下のように区分します:

早期(軽度)認知症の症状

新しいことを覚えることが難しくなり、言いたいことを適切な言葉にする能力が衰えてきます。また気分が変わりやすく、性格にも変化が現れます。徐々に自立した日常生活も困難になってきて、家計簿をつけたり、ひとりで外出したり、どこに物をしまったかを思い出せなくなります。このような症状に関して、取り繕いや怒り、興奮状態になることもあります。早期の認知症では、社交性は損なわれないこともありますが、情緒不安定を伴う異常な行動に家族が気づくこともあります。

・中期(中等度)認知症の症状

新しい情報を学んだり、思い出せなくなったりします。記憶力は低下しますが、完全には失われません。基本的な日常生活動作、例えば入浴や食事、着替え、トイレに介助が必要となってきます。また、正確の変化も進んできて、怒りやすくなったり、不安の訴えが増えたり、あるいは自己中心的になったり頑固になることもあります。逆に感情を表さなくなったり、ふさぎ込んだり自発性が低下して社会生活全般を避けるようになる人もいます。また、人格の特徴や習慣がより強くなり、お金に関する執着や食事に関するこだわりが強まることもあります。この時期を過ぎると行動の異常が目立ち始めます。徘徊を繰り返したり、不適切な状況で突然興奮したり、攻撃的にあることもあります。

・後期(重度)認知症の症状

歩行、一人で食事すること、またはその他の日常生活動作ができなくなり、また失禁もするようになります。食事の飲み込みも難しくなり、栄養状態が悪くなり、しばしば肺炎を起こすようになります。また、寝たきりになると床ずれの危険性も増します。完全介護が必要になるので、長期の療養施設へ入ることになります。このような状態では、何か病気になっても自ら症状を伝えることができなくなるため、感染症などを契機にして、昏睡となり死に至ります。認知症は、進行すると死に至る病です。

 

認知症の治療

・安全確保のための対策

・適切な刺激、活動、および見当識の手がかりを与える

・鎮静または抗コリン作用を有する薬剤の中止

・ときにコリンエステラーゼ阻害薬およびメマンチン

・介護者への支援

・終末期ケアの準備

現在、認知症に対して非常に効果のある薬はないといってよいでしょう。積極的な治療がないため、最も大切なことは、患者の安全を確保して適切な環境を整えることになります。また、介護者への支援も必要です。症状を和らげる薬はありますから、これらもうまく使っていくことが大事です。

患者の安全

訪問でのリハビリテーションは患者宅の安全性を評価することができ、その評価の目標は以下の通りです。

  • 事故の予防(特に転倒)
  • 行動症の管理
  • 認知症の進行に応じた変化に対する計画立案

様々な状況(すなわち、台所、自動車など)で患者がどれくらい機能できるか、シミュレーションしながら評価を行います。障害がみられる患者が同じ環境にとどまる場合は、防護対策(例、刃物を隠す、暖房器具のプラグを抜いておく、車を排除する、車の鍵を没収する)が必要になることもあります。認知症患者はある点を越えると安全な運転が不可能となることから、免許の更新の際などは認知機能検査が必須となっています。患者が徘徊してしまうようなときには、GPS機能を利用して居場所を特定するなどの管理が必要となります。最終的には、介護(例、ヘルパー、訪問介護)または環境調整(階段のない住居、介護施設、高度看護施設)が必要になる場合があります。

環境調整

通常、軽度から中等度の認知症患者は慣れ親しんだ環境にいるときに機能が最も良好となります。ただし、在宅か施設かにかかわらず、以下の対策を講じることにより、患者さんの尊厳も維持するべきと考えます。

  • 見当識を頻繁に強化する(日にちの感覚をつける)
  • 患者が慣れ親しんだ明るく楽しい環境を作る
  • 新しい刺激を最小限に抑える
  • 規則的でストレスの少ない活動を行わせる

見当識は、大きなカレンダーや時計を置いたり、日々の行動に決まった手順をつくったりすることで強化できます。また、医療スタッフが大きな名札をつけて、繰り返し自己紹介するのもよいと思います。認知症患者は日常の変化に適応して慣れるまでには時間がかかります。これから起こることについて(例、入浴または食事について)患者に話すことで、抵抗や暴力的反応を回避できる可能性があり、スタッフや親しい人々が頻繁に訪問することは、患者が社会性を保つための励みとなります。

室内は適度に明るくして、感覚を刺激する物(例、ラジオ、テレビ、常夜灯)を置くことで、患者の見当識を維持し注意を集中しやすくし、静かで暗い1人部屋は避けるべきです。

活動は患者の機能改善に役立つので、認知症発症前の関心事に結びついた活動を選択するのがよいでしょう。活動内容は楽しく、何らかの刺激を与えるものとすべきですが、あまり多くの選択肢や困難を伴うものであってはなりません。不穏を軽減し、バランス機能を改善し、心血管系の状態を維持する運動を毎日行うようにします。運動は睡眠の改善や行動症の管理にも役立つことが多々あります。

薬剤

鎮静薬は認知症を悪化させる傾向があるため、避けるべきです。現在使用可能な認知症治療薬のドネペジル、リバスチグミン、およびガランタミンは、アルツハイマー病またはレビー小体型認知症患者の認知機能改善にいくらか効果的であり、認知症の他の病型にも有効なことがあります。 NMDA(N-メチル-d-アスパラギン酸)拮抗薬であるメマンチンは、中等度から重度の認知症患者において認知機能の低下を遅らせるのに役立ち、コリンエステラーゼ阻害薬と併用すれば相乗作用が得られる可能性があります。認知症に加えてうつ病の徴候がみられる患者は、抗うつ薬で治療すべきです。

介護者への支援

近親者は認知症患者の介護において非常に責任の重い立場にあります。看護師およびソーシャルワーカーは、近親者や他の介護者に、患者の要求を満たす最善の方法を指導できます。介護者は多大なストレスを経験しますが、ストレスの原因としては、患者の保護に関する心配、誰かの世話に献身しなければならない状況からくる苛立ち、消耗、怒り、憤りなどが考えられます。医療従事者は介護者のストレスおよび燃え尽きの早期症状に注意し、必要であれば支援サービス(例、ソーシャルワーカー、栄養士、看護師、訪問介護)を提案すべきです。

認知症の予後

認知症は通常進行性です。しかしながら、進行速度は大きく異なり、原因によって変わります。認知症により期待余命は短くなりますが、生存は個人個人で異なります。

終末期の問題

認知症患者は洞察力と判断力が低下しているため、金銭管理を行う家族、後見人、または弁護士の決定が必要になる場合があります。認知症の早期、患者が判断能力を喪失する前に、介護についての患者の希望を明確にしておき、金銭上および法律上の取り決めを行うべきです。人工栄養および急性疾患の治療についての決断は、必要性が生じる前に決断しておくのが最善です。

認知症が進行すると、高度に積極的な介入や入院治療よりも、緩和的手段の方が適切な可能性があります。

当院では、なるべく早い段階で認知症を診断し、適切な薬物治療とカウンセリングを行います。地域包括支援センターとも協力し、いつまでも楽しい生活を送れるように支援してまいります。