【院長ブログ3】高血圧について
高血圧の話
高血圧とは、収縮期血圧(いわゆる上のほう)が130mmHg以上であるか、拡張期血圧(いわゆる下のほう)が80mmHg以上であるか、高血圧の治療薬を服用している場合です。つい高血圧の治療薬を服用して血圧が正常化していると、持病に高血圧なしと記載する人がいますが、治療を受けている場合は高血圧ありです。高血圧がある人では治療が必要となりますが、実際に治療を受けている方は、約50%に過ぎないと言われています。
血圧は年齢とともに上昇する、一種の加齢現象ともいえます。65歳以上の高齢者の約3分の2で高血圧がみられます。たとえ高齢であっても、血圧が高いほど病気の発生率や死亡のリスクは高くなると言われています。
高血圧の原因で最も多いのは本態性高血圧症といわれるもので、意外ですが原因は不明で、全体の85%に上ります。したがって、医者に始めから高血圧の原因を聞いても困らせるだけですので、やめたほうがいいでしょう。残りはすべて二次性(原因がわかるもの)ですが、これはたくさんの検査を済ませた後で判明します。本態性高血圧症とはいろいろな要素(遺伝や生活環境など)が組み合わさって起こると言われていますが、65歳以上では特に塩分の過剰摂取がきっかけになると指摘されています。二次性高血圧とは、一般的には肥満、睡眠時無呼吸症候群、腎臓の病気、甲状腺や下垂体の病気など、様々な病気で血圧が上がるものです。また、過度の飲酒と経口避妊薬の使用は、血圧を上昇させる原因になりますが、どちらも止めれば正常になる可能性があるものです。高血圧は糖尿病のかたでよくみられますが、直性の関係はないと言われています。
血圧は普段正常でも様々な原因で簡単に上がります。われわれは医学生の時に、生理学の実験で、左手に血圧計を巻いて右手を氷水につけて血圧測定をさせられます。大体、手を氷水につけると上の血圧の値が10~20は上昇します。これは交感神経の刺激が原因です。ですから普段自宅で血圧を測っている方は、こころ穏やかな安静状態で測定をしてください。なにか症状があるとき、たとえばめまいがして気持ちが悪い、頭が痛い、テレビを見ていたら自分もなにか変な病気にかかっているのではないかと心配で仕方がない、こんな時に血圧を測ると普段よりもかなり高い数値が出ます。これを医者に訴えると、場合によってはいらない薬を始められたりします。めまいも血圧が原因だとされてしまいます。
高血圧の初期には体に悪影響はありませんが、重症または長期の高血圧は心臓や脳、腎臓にけがを負わせることになります。ずっと放置すると、心筋梗塞、心不全、脳卒中、腎不全、大動脈解離などを引き起こし、死に至ります。これは高血圧が全身の血管に変化を及ぼし、高血圧が高血圧を引き起こします。高血圧は通常、心臓や脳などの合併症が発生するまで無症状です。合併症のない高血圧では、めまい、顔面紅潮、頭痛、疲労、鼻出血、神経過敏は生じません。高血圧の診断は、複数回の血圧測定で下されます。たまたま1回か2回血圧が高くても、すぐに治療は開始されません。正式な診断に用いる血圧値は、2回または3回の異なる時点において2つまたは3つの測定値の平均値とするべきであるとされています。もっと厳密にいうと、足を床に着け、背中が支えられた状態で5分以上にわたり(診察台ではなく)椅子に座ってもらい、腕が心臓の高さで支えられ、カフを巻く部分が衣服で覆われていない状態にして、少なくとも30分間は運動、カフェイン摂取、および喫煙を控えた条件下となります。機械による自動測定器具は定期的に点検を行うべきで、自動読取装置はしばしば不正確となります。
高血圧を放っておいた場合、眼球の膜(網膜)の血管に異常が出始めます(3度網膜症)。こうなった場合の1年生存率はなんと10%未満であり、どんな悪性の癌よりも予後不良です。高血圧の治療としては、減量および運動、禁煙、食事療法(果物と野菜を増やし、食塩を減らし、アルコールを制限する)と降圧薬があります。減量や運動で血圧を下げるのはかなりの努力が必要になります。降圧薬は医師によって好みがありますが、通常は1種類で開始し、1~2か月たっても目標血圧に下がらない場合は2種類、3種類と追加していきます。