大橋脳神経外科医院、伊東市玖須美元和田、伊豆急行線川奈駅大橋脳神経外科医院

院長ブログ・お知らせ

【院長ブログ7】脂質異常症

脂質異常症~コレステロールのはなし~

わが国では2007年から、以前の「高コレステロール血症」と「高脂血症」を合わせて「脂質異常症」ということになりました。脂質異常症とは次の3つのうち1つでも当てはまると、脂質異常症と診断されます。異常症とは嫌な言いかたですが、、、、

 

  • 悪玉コレステロール(LDL)が140mg/dL以上
  • 中性脂肪(TG):150mg/dLが以上
  • 善玉コレステロール(HDL)が40mg/dL未満
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注意しなくてはならないのは、この値はいずれも空腹時に採血したもの、特に中性脂肪に関しては採血前の食事の影響が出やすいので12時間以上食事をとらない状態で採血すること、と注意書きがついています。

 

コレステロールはどうして悪者にされるのでしょうか?

実は、コレステロールは、私たちの体になくてはならない成分です。私たちの体を作っている細胞、その細胞の膜を作っているのはコレステロールです。また、人間の体の中にある代表的なホルモンである副腎皮質ホルモンというホルモンは、コレステロールから作られています。副腎皮質ホルモンは、別名ストレスホルモンといわれるもので、私たちの体に危険が迫った時、守ってくれるものです。そのほか、性ホルモンもコレステロールからつくられますし、食べ物のなかの脂肪分を吸収する際に使われる消化液もコレステロールから作られます。こうした体の中の重要な成分であるコレステロールがなぜ悪者にされるのでしょうか。それは、重要な成分だからこそ、作ることは可能ですが、あまったコレステロールをチャラにすることができないからです。大昔と比べ、現代は体内のコレステロールの量が多すぎるようになっています。この多すぎるコレステロールのなかでも、特に悪玉は体中の血管の壁の中に入り込んで、動脈硬化を引き起こすようになったのです。動脈硬化は様々な病気を引き起こす悪者、その悪者の源が悪玉コレステロールといったわけです。

 

脂質異常症の原因

まず、食事に関係なくコレステロールの上昇を起こす「家族性高コレステロール血症」があります。血縁の方に脂質異常症の方が多く、血液検査でLDLコレステロールが180mg/dL以上の場合、その可能性が高くなります。この場合は、早期に心臓病や脳梗塞をおこす危険性が高いので、真っ先に薬による治療を始めるべきです。

上記の病気以外で悪玉コレステロールを増やす原因で多いのは、座位時間の長い生活習慣に加え、総カロリー、飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸を多くとりすぎることだと言われています。トランス脂肪酸とは、加工食品に多く含まれています。これらのほかには糖尿病、慢性腎臓病、甲状腺機能低下症、飲酒量過多が言われています。

逆に善玉コレステロールを下げる原因としては、運動不足、喫煙などがあります。

 

脂質異常症と脳梗塞、心筋梗塞との関係

血液中の脂質濃度が高ければ高いほど、脳梗塞や心筋梗塞を起こす危険性が高まります。一応正常値というものが決められていますが、正常範囲にある方でも、さらに脂質濃度が低下すれば、リスクも低下すると考えられています。特に悪玉コレステロール(LDL)を低下させることが重要で、中性脂肪(TG)を下げることや、善玉コレステロールを上げることよりも優先されます。

 

脂質異常症の症状

脂質異常症自体は通常は症状を引き起こしません。ただし、重度の脂質異常症の患者でみられる所見としては、局所的な脂質沈着(黄色腫)が見られます。また、コレステロールが極度に高値であれば、血液の見た目が乳白色(乳状)になります。

 

脂質異常症の治療

脂質異常症の治療目的は、心筋梗塞や脳梗塞の予防であり、一度これらの病気にかかったことがある方の再発防止です。予防するには正しい生活習慣、とくに食事と運動が大切です。食事でもっとも問題となるのが、動物性脂肪(飽和脂肪酸)です。まずは牛肉や豚肉、ひき肉などを魚に変更することがポイントです。運動も悪玉コレステロールを減らし、理想体重を維持するのに役立ちます。
こうした治療でもなかなか悪玉コレステロールが減らない場合には、スタチン系と呼ばれる薬を開始します。スタチン系薬剤は心血管疾患による死亡率と有病率を下げるというエビデンスがあるため、LDL-Cを低下させる上での第1選択の治療薬です。

そのほか、魚類に多く含まれているエイコサペンタエン酸[EPA]やドコサヘキサエン酸[DHA]は、中性脂肪を下げる効果があります。運動は、直接コレステロールを下げる効果はあまり期待できませんが、善玉コレステロールを上げることが知られています。運動することで動脈硬化を改善する効果もありますから、積極的に行うようにしましょう。