【院長ブログ8】パーキンソン病について
パーキンソン病のはなし
最近パーキンソン病という病名をよくお聞きになると思います。ジェームス・パーキンソン博士が最初に報告したので、パーキンソン病となまえがついています。どんな病気でしょう。簡単に説明すると、以下のような病です。
・からだの動きをコントロールしている大脳基底核(だいのうきていかく)という場所の一部の働きが悪くなって起こります
・脳が変化しておこる病気としては、アルツハイマー病の次に多く、高齢化とともに患者さんも増えています
・最もよくみられる症状は、体をじっとしているときにおこるふるえ(振戦と呼びます)です
・また、筋肉がこわばり、動作が遅くなって、からだのバランスがとりづらくなることもあります
・診断は医師が症状を診てつけます
・症状はだんだん悪くなりますが、ドパミンという物質を増やす薬が症状をおさえるのに役立ちます
原因
通常は具体的な原因を特定することができません。何か悪いことをしたからなるというものではありません。また、一部遺伝が関係しているようですが、5~10%と低いものです。
筋肉を動かすと、その信号は脳の大脳基底核を通ります。その際に、大脳基底核はではドパミンという物質がつくられます。ドパミンは体の動きをなめらかにします。パーキンソン病では大脳基底核が傷ついて、ドパミンがあまり作られなくなります。ドパミンが十分でないと、体の動きが遅くなったり、ぎこちなくなったり、硬くなったりすることが知られています。
パーキンソン病の原因は、はっきりと分わかっていません。なりやすい体質が家族の中で受うけつがれる傾向もありますので、おそらく遺伝的な原因が考えられます。
症状
通常、パーキンソン病はかすかな症状で始まり、徐々に進行していきます。パーキンソン病の最初の症状にはふつう、次のようなものがあります。
・筋肉をゆるめて休めているときの手の指と手のふるえ(振戦):これが最もよくみられる最初の症状です
・動きがゆっくりで動き出しが難しくなる
・体のバランスや歩き方、立ち上がるときや座るときに問題がでる
・においの感覚がにぶくなる
・筋肉がこわばり、動かしづらくなる
・排尿の問題が生じる。失禁することもある
・まばたきしにくい、ものが飲み込みづらくなる
・呂律がはっきりせず、言葉がつかえる話し方になる
・不眠や不快な夢が増える
・レビー小体(認知症の原因になる物)が脳にたまっておきることがある。3人にひとり程度が認知症になる
日常生活では、特に手の小さな筋肉のうごきが悪くなるので、シャツのボタンをかける、靴ひもを結ぶなどのこまかい動作が次第にむずかしくなります。パーキンソン病の人の多くは、文字を書く手がふるえ、字が小さくなりますが(小字症)、こういった症状を筋力の低下と勘違いする人もいます。しかし通常、筋力や感覚は正常に保たれます。また、表情をコントロールする顔面筋が正常に動かないため、顔の表情が乏しくなり(仮面様顔貌)、うつ病と間違われたり、逆にうつ病があるのに見過ごされたりすることがあります(パーキンソン病の人ではうつ病が多くみられます)。最終的には、口を開けたままうつろなまなざしになり、まばたきの回数も減少します。顔やのどの筋肉が硬くなるとものを飲み込むことが困難になるため、よだれが出たり、ものをのどに詰まらせたりします。しばしば話し方が単調で小声になります。また、言葉を明瞭に発音できないため、どもるようになることがあります。
診断
医師は次の情報からパーキンソン病を診断します。
・症状と診察の結果
・CT検査やMRI検査などの検査結果(CT検査やMRI検査は、症状の原因がほかの脳の病気ではないかを医師が判断するのに役立ちます)
・ときに、治療薬であるレボドパを使用して症状が改善するか確かめる
通常、初発症状はわずかであるため、早期の軽いパーキンソン病は、診断が困難な場合があります。年齢を重ねると、平衡感覚が低下する、動作が緩慢になる、筋肉がこわばる、姿勢が前かがみになるなど、パーキンソン病と同じ症状が現れることもあるため、特に高齢者では診断が困難です。身体診察に際し、診断の確定に役立てるため、特定の動きをするよう求められることがあります。例えば、指で自分の鼻に触れるように指示されることがありますが、パーキンソン病の患者がその動作を行うと、ふるえが消失したり軽減したりします。また、この病気の患者は、素早く動作を入れ替えることがうまくできないため、両手を膝に置いて、両手を裏返し元に戻すといった動作を素早く繰り返すことができません。診断がはっきりしない場合は、パーキンソン病の治療薬であるレボドパが投与されることがあります。レボドパによって明確な改善がみられた場合は、パーキンソン病である可能性が高くなります。
治療
残念ながら、パーキンソン病を完全に治せる治療法はありません。
医師は次のような治療を行います。
・リハビリテーション(理学療法と作業療法)
・レボドパやカルビドパなどの薬(体内のドパミンをふやすくすり)
・ときには、脳深部刺激療法(のうしんぶしげきりょうほう)という手術
理学療法と作業療法は、体を動かし、日常的な活動や歩行をできるだけ自分の力で行うのに役立ちます。レボドパとカルビドパなどの薬は、楽に体を動かせるようにして、長い間、日常生活がきちんと送れるようにします。主治医の指示がない限り、薬剤の服用をやめてはいけません。パーキンソン病に対する一部の治療薬(レボドパ/カルビドパなど)の使用を突然中止すると、悪性症候群という危険な状態が引き起こされる可能性があり、その場合は症状として高熱、高血圧、筋肉のこわばり、筋損傷、および錯乱がみられます。この症候群は生命を脅かすこともあります。
次のような簡単な方法も役に立ちます。
・日常的な活動をできるだけ多く続ける
・定期的に体を動かす
・日常生活の作業を簡単に行えるようにする(たとえば、服のボタンをマジックテープに替える、マジックテープ付きのくつを買う)
・ジッパータブ(ファスナーを引くための補助器具)やボタンエイド(ボタンをかけるための補助器具)を使う
・つまずかないように敷物を取り除く
・転(ころ)ばないように、トイレや廊下などに手すりを取(り付ける
便秘には以下のような対策が役立ちます。
・プルーンやフルーツジュースなど、繊維分を多く含む食事をとる
・水分を十分に摂取する
・からだの中心を動かすようなを運動する
・ 下剤(ポリエチレングリコールなど)、便軟化剤(センナなど)、サプリメント(オオバコなど)、または刺激性下剤(経口薬のビサコジルなど)を使用して、規則的な排便を維持する
嚥下困難があると食べることも制限されるため、栄養の豊富な食事をする必要があります。息を鼻から深く吸い込むようにすると、嗅覚が改善して食欲が増進することがあります。
介護者と終末期の問題
最後には、次のようなふつうの日常的な活動にも助けが必要になります。
・ 食事をとる
・入浴をする
・着がえをする
・トイレを使う
介護する人がパーキンソン病について知り、手助けする方法を学ぶことは、とても役に立ちます。介護は疲れてストレスがたまるので、介護する人の多くはサポートグループが役に立つと考えています。パーキンソン病の人のほとんどは、基本的な作業ができなくなって、多くの人(約3人に1人)が認知症になります。そうなる前に、事前指示書を書いておくと役立つことがあります。事前指示書とは、患者さんが人生の終わりにどのような医療を受けたいかを、愛する人や医師に知らせるための計画書です。
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